| ■目次
第一章 鳥族の交信
蝶
鴉
袋耳 籠耳
鳥族の交信
鳥群
飛翔
群飛
俯瞰
天の深層
ゆうぐれ
第三章 箸
箸
鯨
果実
衣
桃太郎
文
寸景
澗声
騙し雪
地震雲
あとがき |
第二章 白いもの
白いもの
洗う
鴉声
弄る
差響
紙魚
儀羽
鬆
発見
レタスのはなし
第四章 水の充実
灸
捻鍼
萎える
回鍼
打鍼
あなた擬
金漆考
絡織
付録
ふれる
さつる つねる
水の充実 |
【最終連の詩を紹介】
水の充実
水は流れていくだけ あきらめにも似た惰性 耐性の日日
その日常は平穏の時間だと強がりの納得を引き摺って 流れ急いでいた昨日まで
あと五日もすれば海に着くという思川(※)のあたりで 不意に水切の石が跳ね飛んできたのだ
わたしの精神(なか)に広がる波紋わきあがる風 初めて自覚する絡み織り模様の美響
水は石を探した 長い時間 流れつつ見極めてきた幾多の石と違って光潤な石
一瞬にしてこの石は いままでの時間の無為さを濾過し
留まる美学を悟(さめ)させてくれるかもしれないと思えてきたのだ
桜花が通り 台風が過ぎ 紅葉が彩り 雪が降りてきても 水は海に進むことを止めている
それでいて澱むこともない むしろ澄々としている水芯
天に蒸気する海にはゆっくりと向かえばよい
水の充実とは流れいくことよりも いかに留まれるかという熱い体感のなかにあると自得して
いま生きている
※ 思川……栃木県小山市を流れる川。利根川経由で海に入る。 |