詩 の 原 故 郷 を 求 め て
株式会社コールサック社のグラデーション
第三回 鳴海英吉研究会・宗左近さんを偲ぶ会
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◎第二部 スピーチと鳴海英吉の詩を朗読/3時 30分〜5時
 葛原りょう、尾内達也、遠山信男、
 岡山晴彦、水崎野里子

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【第二部 スピーチと鳴海英吉の詩を朗読】
鈴木比佐雄 それでは、スピーチと鳴海さんの詩の朗読をしていきたいと思います。気楽に語っていただいて、あとは自分の好きな詩を朗読していただきたいと思います。
それと、ちょっと始まる前に先ほどの感想をお伝えしたいのですが。私は今日、千葉の柏から松戸に出てそれでバスで市川に来たのですが、そのバスの中で今の季節ですと山茶花をけっこう見かけたのですが。私が一九八七年に「COAL SACK」を始めた時に鳴海さんを誘って、鳴海さんは創刊号かその次の号頃に「さざんか」という詩を寄稿してくれたんですよね。鳴海さんは花が好きで、特に山茶花が好きだったのかなあと思うんです。「さざんか」という詩も二篇ほど書いていると思います。その詩が載っているのは「花づくし」という詩で、十二カ月を連作し、一月がその「さざんか」だったと思います。今の十一月は「菊」という花の名前で詩を書いていると思いますけど。鳴海さんの家というのは、奥さんの実家に建てられた平屋建てのほんとうに小さな家だったのですが、その前は、鳴海さんは「雑草園」などと言っていますが、野草を収集してそれを可愛がっていたんです。それは見事な野草園でした。そういう美意識を持った方で、それを自宅の前で分けていたりとか周りの人たちに配っていました。先ほど佐藤さんのおっしゃっていた「文化の深層海流」というのですけど、まさに鳴海さんはそういうところがあって、そのあたりは鳴海さんが今後ますます評価されて、私は日本を超えて世界に発信できる詩人ではないかと思っています。そういうような意味で、佐藤さんの先ほどの講演というのは、非常に貴重な講演だと思っています。佐藤さんのことに関しては、鳴海さんは「佐藤文夫は、もしかしたら天下を取るかも知れない」と私に言ったことがありました。その時私は佐藤さんと会ったこともなければ、話したこともなければ、詩も読んでなかったのですが、それは多分佐藤さんの民謡研究とかそういうことを踏まえてそういう発言をされたのかなあと思います。私は『鳴海英吉全詩集』をつくりたいと思った時は、そういう鳴海さんからいろんな人の話を聞いていて、八七年からずっと十数年一緒に酒を飲んだりして話していていろんな人の話が頭に残っていて、鳴海さんの周りには素晴らしい詩人がいるっていうことが分かっていたんですよね。だから、そういう方たちがきっと応援してくれるはずだ、ということでこの『全詩集』が実現したんです。
その一人の中で?石村さんなのですが、石村さんは実は膨大な詩論を書いていまして、コールサック社で実は今、私の『詩論集』のあとに第二の詩論集ということで、石村さんの詩論集をつくっています。それを発行するのを非常に楽しみにしているのですが。それはものすごい膨大なものですし、先ほどの講演の中にもありましたけれども仏教関係にすごく造詣が深い方なので、特に法華経とか浄土真宗だとかそういうことも深いので、そういうものが詩論の中に現れています。あと、インドのことなどもすごく詳しいんです。アジア的なものもよく分かっているということもあります。そういう意味では今日の講演もまた一つのヒントになるのではないかと思うのですが。先ほどおっしゃっていた「弱者として生きる反骨精神」といいますか、そういうものが鳴海さんの中にあって、でもそれはすごい強さだなあと思うんですよね。
最後に芳賀さんの感想ですが、芳賀さんとは鳴海さんが倒れたあとに何回か二人で鳴海さんを訪ねまして、その時に「ああ、芳賀さんは鳴海さんをほんとうに尊敬していて愛しているんだなあ」と感じました。そういうような意味で、鳴海英吉研究会の中でも柱になってくださって、ほんとうにありがたいと思っています。あと、宗先生のことも、先ほど言った「記憶の現実的時間」ということもまさにズバリ本質を衝いていると思うんです。そういうことも含めて、今回の研究会は出版記念会を含めて四回目ですが、今後はやはり鳴海さんと関係の深い方に深い研究発表といいますか、そういうような場にしていきたいと思っています。今後もよろしくお願いします。
それではスピーチと朗読ということで、一番目に葛原りょうさん。葛原さんはもう二回も朗読してくれています。よろしくお願いします。あっ、昨年詩集を出しています。
葛原りょう ああそうですね。『朝のワーク』という詩集を青肆青樹社から出しまして、何とか、いっぱいいっぱいですけど……。(笑)

◇葛原りょう
前回から鳴海さんのこの研究会に出ていまして、いろいろと鳴海さんの詩に接するようになったのですが、何ていうか、「鳴海さん」というふうに、会ったこともないのに呼びたくなってしまうような親しさを詩を読んだ瞬間から持ちまして、またそういう人というのは愛されるような詩人でもあるし、自分もそういうふうに愛されたいと思ったりしているのですが。そうするためにはやはり愛があふれる、こちらから与えるような、与えるというか詩の中にはち切れんばかりの情のあるものを込めたものを書かなければならないなと思っています。ちょっと今まで悲観的なものが多かったので、私は非常に勉強になったというふうな感じがありましたね。去年からほんとうに良い経験をしていると思っています。
鳴海さんには出会えなかったのですけれど、私はほんとうにすれ違っていますね。川崎洋さんが亡くなられて、木島始さんや石垣りんさんが亡くなられて、お会いできた可能性のある方々とほとんどすれ違ってしまいまして、それはちょっと残念なのですけど。でも、やはり作品の中で出会えるというのはありますし、いつでもこういうふうに読んで味わうことができるのは幸せなことだと思っています。
  鳴海さんの詩は、朗読者にとっては朗読しがいがあるというか、生活者そのもののことばでもありますし、ロシア語が混ざっていたり、念仏が混ざっていたり非常に手強い。だから、今日も特に何を朗読しようかなんて全く決めてない。ちょっとペラペラめくって気になるものを朗読しようかなと思っていますけれど。ほんとうに朗読しがいがあるなと思っています。特に宮沢賢治も非常に私は好きで、「dah-dah-sko-dah-dah」とかすごく朗読したい詩人の一人なんですけど。そういう系譜で繋がるかなという感じがあります。やはり宮沢賢治から鳴海英吉、そういう側の列に私も立ちたいというか、そういう立場で書きたい。
「農民の手」「板金工の手」というのを持ちたいと思っていまして、実はつい一カ月半くらい前に清掃業の仕事につきまして。それまでフラフラしていたんですけれど、それじゃいけないよと鈴木比佐雄さんからもお叱りを頂戴して……(笑)。あとは新川和江さんも同じようなことを仰って「生活も大事だから。詩人だけ、詩だけが全てになったらもうおしまいよ」と言われましたので。仕事を持つようになって朝八時前に会社にもう行っていて、夜遅くまで平日びっしり仕事をして、ウォッシャーとかデッキブラシとかを持つようになりまして、豆ができて、ほんとうにその点では自分は家がプチブルの環境だったので「農民の手」「板金工の手」という労働者の手は遠かったんですけれど、自分はとにかく昔から憧れていまして、今はいろんな薬品を使っているからボロボロになっちゃっているけど、そういう手を持つことができたのはちょっとうれしいなあと、密かに思っています。(声援と拍手)
それで、やはり鳴海さんが酒が好きだというので、自分も酒が大好きなんですけど、山頭火とか放哉も大好きなのですが、昨日は一カ月半で会社の歓迎会がありまして、ちょっと大手町で飲んでまして、歓迎会をしてくれてうれしかったです。そういうのも初めての経験で。それで飲んでいたら上野まで飲み歩いて、私は上野に住んでいるので電車に乗る必要ないのに、なぜか電車に乗ってしまいまして、大宮行き最終電車に乗ったんです、昨夜。(笑)気がついたら浦和をとっくに過ぎていて、ショックを受けましてね、ちょっと朝日を浴びて帰ることになっちゃったんですけれど。ほんとうに久しぶりに昨夜は飲んでしまって。でも、鳴海さんとも飲みたかったというのは前回も言いましたけど、ほんとうに自分にとっては「鳴海さん、鳴海さん」と何か言い寄りたいような、そういう存在です。
  そういう詩人の朗読するのはやはり武力也さんとかがいろいろと導いてくれたというのがありまして、多分ここに来ることになったのも武力也さんの存在が強かったのではないかと思っています。非常にいろんな人との出会いが、コールサック社にも出会えて、これからどんどん拡がってゆくのかなと感じます。
  では、ちょっとペラペラっと朗読をします。まだ決めてないのですが、さっきお酒の話をしたから……。

 二合の酒

二合の酒を呑むのである
たかが 二合の酒を
おれ 正座して呑むのである
神に見立てまつるものを ここに置き
こころ 静かに 呑むのである
榊の葉 酒にひたし
すこし熱カンにして 呑むのである
失業中の正月
可哀そうだと カミさんが
二合の酒を都合してくると
オミキです と言った
おれの家には 神棚がないから
おれが 恐れ多いけれど神さまになって
そこのオミキ いただくことにする
唱えよ べろべろ祭文がたり
おれ むれ わかれ はなれ やつれ よごれ
くずれ ちぎれ みだれ ながれ ながれ ながれ
よいどれ たわむれ ずぶぬれ つかれ まみれ
あぶれ ゆれ ゆきだおれ……
カミさん
れの字には 反逆のきざしがみえる
なみだ 左右にふりわける
カミさん うんうん うなずき
シチューのじゃがいも おれの皿に盛り
スープだけ すするのである
カミさん もう語るな

 秋・念仏

*ぎゃていぎゃてい はらぎゃてい
はらそうぎゃてい ぼうじそわか*
ちいーん
あんなあ ぎゃていぎゃていって
なんだっぺ おめえさん判るけ?
解説したくなったが やめる
おまじないと 同じだっぺ
そんなもんだべ

念仏堂に 仏様が欲しいと
じいさん ばあさん
へそくり集めて買う
この仏様 安かった
あみだ仏を買ってきた
あれっ 宗旨違い
云いかけたが やめた
安い方で よかっぺ

仏さんも云うていなさった
念仏 題目 おれの知ったことか
おまいら 好きに死んでくれ
おれも せいせいする

あーあ
はんにゃ はたみた へそみた
しょうがないから したもみた
色即是空 空即是色……………
おれ 大きな声で唱和する
ちいーん
大きな大きな 秋の月
つまらん浮き世に にゅっと出た
勢いあまって 酔っぱらいのおれ
鐘を叩きながら つけ加えた
仏さん遊ぼっ…………………

どこを開いても朗読したくなっちゃいますよね。(笑)やはりことばと詩の、詩人というか詩人の意識よりも近いんですね、距離がなくなってしまう。やはり書き言葉ではないというのは、佐藤さんがいろいろおっしゃられたように非常にしゃべっているように書いているというのは、自分のスタイルにピッタシなので。


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