詩 の 原 故 郷 を 求 め て
株式会社コールサック社のグラデーション
高炯烈『長詩 リトルボーイ』出版記念・交流会
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◎第一部 

  開会の言葉…海老根勲
  挨拶…福谷昭二、鈴木比佐雄
  著者挨拶…高炯烈 
  鼎談…高炯烈、本多寿、佐川亜紀
  (鼎談司会 鈴木比佐雄 通訳 徐錫姫、金令姫)
  挨拶…米田勁草
  閉会の言葉…御庄博実

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松尾静明 それでは、原爆詩ということにとどまらず、日本と世界の表現の中に新しい一頁を刻む、高炯烈氏著日本語訳名『長詩 リトルボーイ』の出版記念会を行いたいと思います。皆様にはご遠方よりお忙しい中ありがとうございました。
  ところで唐突でございますけど、ご出席の全員の皆様にお願いがございます。これから『長詩 リトルボーイ』の作者である高炯烈氏に対して、お祝いの意味で全員で大きな拍手をお願いしたいので、よろしくお願いします。(一同盛大な拍手)『長詩 リトルボーイ』ご出版、心よりお祝い申し上げます。
ありがとうございました。ちょっと今順番が狂ってしまいました。(笑)拍手は高先生が起立された後でとのことでしたが(笑)拍手が先になったようで、ちょっと順番が狂いました。高先生、どうぞお座りください。
僭越ではございますが、私が司会を仰せつかりました松尾静明と申します。よろしくお願いします。(拍手)こちらは李美子(イ・ミジャ)さんと申されまして、本日の司会と併せて通訳をなさって下さる方です。非常に重要な役目を快く引き受けて下さり、ありがとうございました。
李美子 東京から参りましたイ・ミジャ、李美子と申します。私は七年前の九九年に第一詩集『遥かな土手』という詩集を出しました。私は在日二世ですが、在日一世が少しずつ年齢が高くなって亡くなっていく中で、そういう自分たちのオモニ、アボジ(母、父)の記憶を残したい、日本に残したいという思いでこの詩集を思い立ちました。ですからその中には多分、私の娘は在日三世ですけれども、この子たちが知らないお祖父ちゃんお祖母ちゃん、ハルモニ、ハラボジの日本での生活、大変だった思い、あるいは喜び、いろいろな経験などを是非伝えたかった。それは日本の方にも是非読んでもらいたいという思いで書きました。そういう詩を書いている関係もあり今回皆さんとお会いできるようになりまして、高炯烈先生の『リトルボーイ』もそうですけれども、在日韓国の原爆被爆者のことを長編叙事詩にして書いたもの、そういう何か因縁みたいなものが、この広島と皆さんと私たちを結びつけたのではないかと思うのです。そういう意味で、今日はほんとうに僭越なんですが、韓国語も二世ですからあまりできないのですが、こうやって皆様の前でお話をさせていただいています。どうぞよろしくお願いします。(拍手)
松尾静明 それでは、開会のお言葉を頂きたいと思います。元中国新聞論説委員の海老根勲氏にお言葉を頂きます。海老根氏は、中国新聞記者時代から論説委員時代まで非常に長い期間にわたって広島の文化全般に眼を配って頂いた方であります。とりわけ原爆問題には力を注いでこられて、広島花幻忌の会という原民喜の業績を顕彰する会がございますが、その会の事務局長を務めて頂いております。よろしくお願いします。(拍手)
海老根勲 ご紹介を頂きました海老根でございます。本当は花幻忌の会の代表の安藤が開会の挨拶をすることになっていたらしいのですが、彼が来ていないものですから、「事務局のおまえがやれ」ということでこちらに来て言われたものですから、これは開会の挨拶というのはどういうふうにするのか分かりません。「これから始めます」で終わってしまうのでは申し訳ないので、何か一言しゃべらないといかんなぁと思いながら、一生懸命考えています。
  私はこのたび初めて『長詩 リトルボーイ』という詩集を送られてきまして拝見いたしました。まだ十数頁ぐらいしか読んでなく申し訳ないのですが、昨夜から拾い読みをしました。日本とアメリカ、あるいは朝鮮半島││こういう形でまさにもの凄い長編叙事詩にまとめ上げられたその構成力、あるいは想像力、イマジネーション。そのもの凄さを発揮した高さんにまず敬意を表したいと思います。
  いま広島では被爆体験の風化とかいろいろと言われています。「体験の風化」というのは、取りも直さず「記憶の風化」だろうと思います。それは、風化してゆく体験あるいは記憶をこのような形で紡ぎ直して次の世代に繋いでゆく、その言葉の力、文学の力というものに改めてまた敬意を表したい。今日はそこに並んでいますが私たちの仲間である御庄博実さん。石川逸子さんと一緒に「在韓被爆者の大会報告」を八月六日付で出版されています。こんな形で、いろいろ所でいろいろな形でいろいろな言葉が紡ぎ合わされて、そして次の世代に繋いでいく。今やはり風化が叫ばれているからこそ、そういう一つひとつの作業が大切なのだろうと思います。その一つひとつの作業を繋ぎ合わせて、そしてこの広島の、あるいは広島と朝鮮半島の、東アジアの、さまざまな歴史の負の問題、あるいはそれらを乗り越えていく共生の在り方││そういうものを次の世代と一緒に探ってゆく、そのよすがとしてまたこういう詩集の誕生を喜びたいし、これからもまたいろいろな場でいろいろな詩人が、文学者が、風化する記憶を言葉に紡ぎ直していって記憶に留めていただきたい。そんなふうに思います。そういう様々な記憶の風化に抗していく文学の力みたいなものを今日またこうして皆さんと一緒に学び合えることを、私は非常な喜びとしています。こんなことで開会の挨拶になるのかどうか分かりませんが(笑)。それでは、詩集『リトルボーイ』出版記念会を皆さんと一緒に学び合いたいと思います。ありがとうございます。(一同拍手)
松尾静明 ありがとうございました。ピンチヒッターにしては凄いことをやっていただきました。(笑)さすがでございます。
  続きまして、前広島県詩人協会会長福谷昭二氏よりご挨拶をいただきます。福谷昭二氏は、前広島県詩人協会会長という肩書きが示す通り広島県詩壇の発展に大きく寄与なさった方であります。また、教育の面で公立教育の校長のみならず民間福祉学校の校長さんをつとめられるなど、さらに文化の面では、町誌、郡誌の執筆を担当されるなど、人権教育や社会教育に精通されている方であります。それが評価されまして「勲四等瑞宝章」を受章されている詩人でもあります。よろしくお願いします。
福谷昭二 失礼いたします。大変詳細な、しかも過分な紹介をいただきまして、ちょっと恐縮しております。今日は私の立場は、広島での高炯烈さんの『長詩 リトルボーイ』、この詩集の出版記念会を東京のコールサック社、広島花幻忌の会、それから火皿詩話会、その中の火皿詩話会の代表として一言ご挨拶を申し上げるということでございます。本当に暑い中、しかも広島では明日が記念日であります。そして様々な催しが今日から明日にかけては行われております。とりわけ広島の方は、そういう行事でいろいろお忙しい予定があったのではないかと思いますが、沢山おいでいただきましてありがとうございます。篤く御礼を申し上げます。
  先ほど海老根さんから非常に的確な文学の果たす役割、言葉の果たす役割といったことについてのお話がございました。私は一言だけ、このたびの『リトルボーイ』の持っております意味と申しましょうか、それを私なりに把握していることをちょっとお話しさせていただきたいと思います。
  それは何かといいますと、この高炯烈さんの詩集は長編叙事詩であります。「長編叙事詩」。だから「叙事詩」というふうに私たちは一応私たちは理解していいのだろうと思っております。が、この叙事詩というのはまたこれ、「詩劇」「叙事詩」「叙情詩」と、詩の歴史の中では非常に大きなパートを占めてきたものであります。そういう歴史の中で、私はこの『リトルボーイ』の持っている一つの大きな意味があると思います。普通、叙事詩というと、これは我が国の古典にもありますし、ギリシャ、ローマ、あるいはその他中世のヨーロッパ、そういったような所の様々な古典の中に叙事詩と言われる作品が沢山あります。ですが、そういう作品は、多くはある特定の英雄なり活躍した偉人なり、そういう人々の一生を叙事的に描いている。これが叙事詩の大きな概念です。しかし私は、高炯烈さんのこの詩集が出たことによって人類史上が持っております叙事詩の持つ意味というものを大きく変えて行くのではないかと理解をいたします。それは、この作品の中に出てまいります多くの人々ですね、それはほんとうにこの原爆という惨劇の中で生き、闘い、悶え、苦しみ、亡くなっていったそういう人たちの一人ひとりが描かれている。そしてそれが、大きな時代を描く叙事詩になっているわけですね。従来の私たちが言っている叙事詩とは非常に大きな変化が現れていると思いまして、今後これが世界の文学の叙事詩のスタイルを変えていくものになっていくのではなかろうかと思っております。そういう意味で、非常に大きな意味があるのではなかろうかと思っています。
  同時にもう一つ、私たち広島に住んでいる者から申しますと、今年の夏は、こういった東京でお出しになっている『リトルボーイ』もそうですし、我々「火皿」の仲間でいろいろと活躍しております今日も来ておられますが長津功三良さんのこれも八月六日の発行でございますが『影たちの墓碑銘』、この二つの詩集はアプローチの仕方は違いますけどやはり叙事詩の中に入ると思います。それからもう一つ八月六日の日付で、これは私たちがいろいろと取り組んでまいりましたが広島で、まぁ私に言わせれば最も早く原爆の詩を書かれたと言って良いと思います。米田栄作さんという大先達詩人の方がおられますが、その方の詩集もほぼ全詩集で八月五日に出版しています。そのように考えてみますと、今年の広島の詩というもの、あるいは広島を歌った詩というものは、非常に大きな意味を持っているのではなかろうかと思っております。叙事詩の新しい展開。さらにまた、米田さんのあの惨劇の中を掻い潜り子供を捜して歩かれた、その中で歌われた叙情、素晴らしいと思います。そういった様々な詩集が出ております。今年六十一年目です。六十年というある風化の時期とも言われますが、この時期に今後の展望を持たせてくれる素晴らしい詩集だなと思います。
  この詩集をお出しになるにあたりまして、もちろん高炯烈さんもそうですが、日本語訳をされた韓成禮さん、あるいは日本での出版の労をとられたコールサック社の鈴木比佐雄さん、こういうお方の力があって『リトルボーイ』が出たのではなかろうかと思っております。それぞれのところでご活躍なさいました皆さんの力にお礼なり敬意を表して挨拶に代えたいと思います。今日はどうもありがとうございました。よろしくお願いいたします。(拍手)
松尾静明 それでは次に、高炯烈氏の『長詩 リトルボーイ』の出版を手がけられた鈴木比佐雄氏に出版の経緯について語って頂きたいと思います。鈴木比佐雄氏は人間の存在ということについて、「個人そのものの存在」と「個人の社会的存在」について常にその融合ということを考えてこられた詩人だと言えると思います。ご自分の作品にそのことを投影するというのはもちろんですが、そういった詩を書く詩人、また書いてきた詩人たちを発掘し、再評価するにことにも力を注いでこられた方です。それが『浜田知章全詩集』、『鳴海英吉全詩集』そして今日の『長詩 リトルボーイ』ということであると思われます。よろしくお願いいたします。

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