「コールサック」日本・韓国・アジア・世界の詩人

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ロバート フロスト(大山真善美/訳)

ロバート・フロスト(一八七四-一九六三) 一九五〇年・ノーベル賞候補。一九五一年:ケネディ大統領就任式で朗読。アメリカの国民的詩人。口語と提喩で有名。


【詩の紹介】

「消えろ 消えろ」

電動のこ 裏庭で唸り 音を立て木を切る
木屑と共に産み落とされる 薪の長さの木々
風立ちて木々が放つ芳香
上げたまなこに入りくる
綿々 連なる五連の山脈
遠く バーモントの夕焼けの下に
電動のこ 唸り 木を切り 唸り 木を切る
負荷で変るリズム
無事にひと日は終わりゆく
「終わりにしよう」と言ってくれていれば少年は喜んだのに
待ちわびた 仕事からの解放 その三十分が与えられたのに
エプロン姿の姉さんが来て
「夕食よ」と言ったのだ その言葉で
丸のこは 夕食の意味を知っていると 証明するかのように
少年の手から跳んだ いや跳んだかに見えた
少年が手を貸したに違いない どうあれ
どちらも出会いを拒まなかった だが、手が!
最初の叫びは悲しげな笑い声のよう
くるり振り向き 手を差しあげた少年  
半ば訴え 半ばこぼれ落ちる命を守るように 
そして 少年は全てを悟った
心はまだ子どもでも 大人の仕事をする少年 
十分に理解できる年だった
全てが失われたことを 「手を切り離さないで お医者さんが来ても お姉ちゃん、ぼくの手を切り離しちゃイヤだ!」
そう、でも 手はすでに駄目だった
医者は子どもをエーテルの闇に寝かせた
横たわり 荒い息をしていた子どもの
脈を取っていた人が驚いた
誰も信じなかった 少年の鼓動は
弱く・・微かに・・そして 無くなった 
終ったのだ もう、できることは何も無い
そして大人たちは 死んだのが自分たちでは
なかったので 元の持ち場に戻っていった

 *題はシェークスピアのマクベスよりの引用。(「消えろ 消えろ 束の間のろうそく!」


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「コールサック」(石炭袋)117号 2024年3月1日

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