「コールサック」日本・韓国・アジア・世界の詩人

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斎藤 彰吾 (さいとう しょうご)
<経歴> 1932年岩手県生まれ、北上市在住。日本現代詩人会、岩手県詩人クラブ、北上詩の会、詩人会議、各会員。日本現代詩歌文学館振興会評議員。詩集『榛の木と夜明け』『イーハトーボの太陽』。詩論集『真なるバルバロイの詩想』。絵本『なりくんのだんぼーる』。

<詩作品>

北上川のトロッコ流詩
 

(鹿踊りの太鼓 Ⓐ)
 


天竺の岩崩くずれかかるとも
 心静かに 遊べ友だち 遊べ友だち
                 (繰返す)


われは 国見山極楽寺の不動明王
色黒く眼をむいた憤怒の形相にて
猛る蓮れんの炎の中
巨きな石の上に立っている
右手に悪魔をこらしめる剣を持ち
左手に悪魔を縛りつけるロープを持つ


こたびの千年に一度という天変地異の災害で
たちまち犠牲になったあまたの人たち
どこへ流されたのか分らないあまたの人たち
まことまこと極みの無念がこみあげてくる


こたびの千年に一度という天変地異
きっときっと縄文時代にもあったのだ
まことまことに 悲しや悲し
天地にひそむ悪魔どもよ
お前たちはことごとく去るがいい
消え失せろ いかがわしい悪魔ども
見つけ次第 ことごとく焼き尽せ
人間の顔をしたいかがわしい悪魔どもを


われは国見山極楽寺の不動明王
猛ける紅蓮の炎の胸元から
使者コンカラやセイタカたち
八人の八代金剛童子を放つ


サンゴ橋の下
一万個のトロッコを流す四艘の舫舟
不動明王の聖なる火群が
トロッコに点火され
暗闇の水面をあかあかと照らし
八列に広がったトロッコが
ゆったりと流れてゆく。


明明と橙色に
トロッコが北上川を流れてゆく
川面もいっぱいに
国見山極楽寺不動明王の盆灯が流れてゆく
途方にくれたあの日から五カ月
ホタルのように群れなして
トロッコがゆったりと流れてゆく


散歩するわたしたちの歩みと同じ速さで
流れゆく一万個のトロッコは
震災からの復興を祈っている
あの日 突っ立ったまま
涙に暮れたあなたが
えがおで手をあげてこちらに歩いてくる
三五〇年ほど前のむかし
川岸の衆が供養に始めたトロッコ*流し
明明と橙色に川面を照らし
黙々とトロッコが流れてゆく
やがて 天空をゆさぶってこだまする花火
天空を彩る菊や牡丹の花火を川面に映して
聖なるトロッコの火は
流れゆく水とともに いつまでも消えない
いつまでも わたしたちのまなうらにある
 


(鹿踊りの太鼓 Ⓑ)
 


天竺の岩崩れかかるとも
  心静かに 遊べ友達 遊べ友だち
 


(鹿踊りの太鼓 Ⓒ) 


*映像制作    北上ケーブルテレビ
 ナレーション  遠藤 修子
         高橋 吉信
 平成23年8月8日(月)
       19時15分~29分放映
   北上みちのく芸能まつり
   トロッコ流しと花火の夕べ


*トロッコ…岩手県北上では灯ろうのことをトロッコと呼ぶ




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