「コールサック」日本・韓国・アジア・世界の詩人

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朝倉 宏哉 (あさくら こうや)

1938年 岩手県生まれ
  県立水沢高校 早稲田大学第一文学部史学科卒
  NHKにて番組制作(1962~1993年)
  NHK文化センターにて講座企画・運営(1994~1999年)

  1973年 詩集「盲導犬」(崙書房)
  1975年 編書「日本の詩・石川啄木」(ほるぷ出版)
  1983年 詩集「カッコーが吃っている」(青磁社)
  1994年 詩集「フクロウの卵」(土曜美術社出版販売)
  1999年 詩集「満月の馬」(レアリテの会)
  2003年 詩集「獅子座流星群」(土曜美術出版販売)
  2006年 「乳粥」(コールサック社)

  2009年 コールサック詩文庫『朝倉宏哉詩選集一四〇篇』

  日本現代詩人会理事  日本文芸家協会 岩手県詩人クラブ会員
  中国の歴史と文化を学ぶ会会員
  詩誌「舟」「回転木馬」「火山弾」同人

  現住所 〒262-0015 千葉市花見川区宮野木台3-17-10
  Tel&Fax043-256-561


【詩の紹介】

ミイラと少女と二羽のスズメ

ウルムチの博物館で男のミイラを見た
千年以上前に栄えた高昌国の将軍だという
何かを掴んだ形で差し上げた右手
  (指揮棒を掴んでいた?)
あんぐりと開けた口
  (なかに玉(ぎょく)があった?)
指揮棒は朽ち果て
玉は盗掘されて無いという


ゴビ灘(たん)の高速道をトルファンに向かった
天山山脈南麓に広がる炎熱のオアシス
その郊外の高昌故城
ミイラの将軍が活躍した王国だ
玄奘がインドへの旅の途上歓待された城塞国だ


シルクロードのロマンというけれど
見渡すかぎりの日干し煉瓦の総崩れ
外城も内城も宮城も寺院も乾ききった廃墟
興亡の果ての滅びの様(さま)をむき出している惨状
火炎山を背景に怨念が赤い炎をあげている


ロバ車に乗って遺跡に入って行く
ウイグル族のかわいい少女が
極彩色の民族衣装を翻らせて追いかけてくる
オ母サンガ作ッタ帽子ト手提ゲ袋
安イカラ買ッテ!
ワタシノ名前ハ艾子提古麗(アズデイークレイ) 九歳
ほほ笑みながら巧みな日本語


ミイラの将軍からこの少女までの遙かな時間
指揮棒は風化して跡形もなく
  (空(くう)を握るミイラの手の形で残り)
副葬の玉は異教の墓盗人とともに消えて
  (将軍の口は叫びの形になり)
高昌故城は無数の物語(ストーリー)を封印している


王国の最も奥深いところの仏寺に着いた
ここだけが昔日の面影をとどめている
六二八年 若き玄奘はここで仏法を説いたのだ
観光ラクダが寝そべって千年の夢を貪っている
ロバは立ったまま瞑目して永遠に嘶かない


あ 将軍が何か叫んで右手を上げた
槍のような指揮棒の差す方を見ると
二羽のスズメが仏塔のてっぺんにとまっている
中央アジアに来て初めて見る野鳥だ
砂漠の廃墟でどのように生きているのだろう
スズメがチチチッ チチチッと鳴いた
少女がにこやかに踊りのポーズをとった

  「COALSACK」52号より

 


がんじがらめ

「生きて虜囚の辱めを受けず」
戦陣訓のわずか十二字のために
どれほどの日本人が無駄死にしたか
兵士ばかりではない
沖縄で 満州で 南方諸島で
何十万人もの老人婦女子が自ら命を絶った


言葉でがんじがらめにしたのは誰だ
「玉砕」とは何だ
「散華」とは何だ
むごたらしい死に方を讃美するように
言葉を虚飾したのは誰だ
玉が砕けるのではない
華が散るのではない
生きている人間の肉と血と骨と心が砕けて散るのだ


「一億総玉砕」「神州不滅」
矛盾するスローガンで
戦車や重機と戦うために
女学生にまで竹槍訓練をさせたのは誰だ
「飛行機を作る」と寺の鐘まで供出させ
「燃料にする」と松の根まで掘らせ
「欲しがりません 勝つまでは」と飢えた子供に言わせたのは誰だ
「弾丸(たま)に死すとも病いに死すな」と息子を戦場に送る母にしたのは誰だ
自分が鬼畜になっていながら「鬼畜米英」と叫び
「今に神風が吹いて必ず勝つ」と国中を狂信させたのは誰だ


言葉をねじ曲げるな
敗退を「転進」などと言うな
自爆を「特攻」などと言うな
台風を「神風」などと言うな
日本を「神国」などと言うな
天皇の声を「玉音」などと言うな


六十五年前
言葉をねじ曲げ
自らその呪縛にかかり
国民をがんじがらめにして
世界を相手に無謀な戦争に突入し
無数の人を殺し
無残の極みをもたらした


それは彼の祖父
いや もしかしたら それは君の父
いやいや もしかしたら それは私の祖父と父
かもしれない

  「COALSACK」54号より


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