「コールサック」日本・韓国・アジア・世界の詩人

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岡田 惠美子 (おかだ えみこ)

<経歴>


1931年、茨城県下館市生まれ、栃木県宇都宮市在住。

詩集『レスボスの馬』『海のドラマ』『焔の唄』『花暗』『十軒町界隈』『白狐』『露地にはぐれて』

エッセイ集『此の子誰の子』。

日本現代詩人会会員。

「条件」「嶺」同人。


<詩作品>



パンソリ



朗々と響き渡る唄声
物語を説くように力強く
淀みなく繰り出される声調の見事さ


会場ではすでに
舞踊家が優雅な長い袖を翻し
古典舞踊のリハーサルに余念がないが
その舞台の袖から聞えてくる唄声に
一瞬身内に電流が走った


パンソリ
韓国独得の音楽だった
遠い歴史の向うから吹いてくる風か
檀君朝鮮の起源から
幾多の戦乱を潜り抜けた
民族のどよめきなのか
祖国の興隆を願う
秘めた祈りか


生れて初めて耳にする楽曲に
心が震える程の衝撃を受けた
コムンゴの素朴な弦のふるえ
悲しみの波が寄せ返すように
パンソリは
会場を広大な草原に替え
雄大な大漢江の流れへと
聴衆を誘ってゆくのだった




夕日の聖母子像



アシジはミモザの春であった
聖フランシスコ教会
壮麗な回廊をめぐり
ジョット描く聖フランシスコの生涯も
日本人ブラザーの案内で拝観した


薄暗い階段を昇り
外に出ようとした時
一枚の絵の前で釘付けになった
それはビザンチン様式を
色濃く残した
チマブエ描く聖母子像であった


どの様な謎が秘められているのか
神学者達が解明しようとして
様々な意味付けをする
例えば幼子イエスの指先の
指し示す行方一つにしても


そんな事はどうでもよかった
只此の薄暗い階段の下に
一筋の夕日が差し込む時
此の聖母子像が
美しく輝いて見えるという
その事だけで名付けられた
夕日の聖母子像


美しくたおやかな聖母に
抱かれたふくよかな幼子
何の患いもなく見開かれた瞳
見る者の心を惹き付ける此の一枚の前に
何の意味付けが要ろう


一筋の夕日こそ神の啓示
信仰とは或いは此の様な
美に打たれた心の働きに
よるものといえるのではないだろうか


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「コールサック」(石炭袋)117号 2024年3月1日

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