コールサックシリーズ

『大村孝子詩選集一二四篇』

朝日橋が木の橋だったころ/北上川はよくしゃべっていたもんさ/岸辺のわすれなぐさや鳥たちと/たっぷりの川波もひだひだから笑いころげ/橋げたもまるで楽器の輪のように/ぐるぐる回って上機嫌さ/賢治さんだって橋のまん中までくると/船頭さん、何かおもしろい話はないかね……/すると川波も喜んで勝手な揺れ方をする/私は急いで時間をとめる/あれはとても秘密の話なのだ(詩「宮沢賢治の投影による習作」より)

解説文:森三紗、鈴木比佐雄、吉野重雄
四六判/192頁/上製本
定価:1,620円(税込)

解説文はこちら

大村孝子詩選集一二四篇

発売:2012年4月17日



【目次】

詩集『ゆきおんな』(一九六一年刊行)より
序  村野四郎  
ゆ き  
雪のめるへん 
凍 死  
もだん・おとたちばな  
白の原型  
もくれん忌   
唄 
 1 
 2  
 3  
落葉のうた  
山に入る  
火 
川が流れている 
いいえ秋はやっぱりさびしい 
五月がきました  
るりまつり  
冬の少年    
悔 恨  
山の絵を描く山の子どもたち 
あとがき 

詩集『北のかんむり』(一九八〇年刊行)より
不随の琴  
桜あかり  
海辺で  
夕 鶴  
ゆ き  
あじさい  
北ぐににそそいでください  
朝顔の空間  
栗の木  
雨が降っている  
おしろい花  
木  
はた結び  
五能線  
にぎりめし  
お茶の会  
情 景 
証 言  
Ⅰ アカイ シソウ  
Ⅱ ながい昼 
Ⅲ 法廷に立つ 

詩集『草のみち』(一九八五年刊行)より
Ⅰ  
水 仙 
コスモス 
落花のうた  
きみどの花  
白い月見草  
ひとりしずか  
タンポポ  
アネモネ  
Ⅱ  
春の野  
草のみち  
この餅 うめぇな  
寒い夏の午後  
十五夜のころ  
炎の中の母  
元朝参り  
退 職  
女たち  
「ホメラレモセズ」と書き置いたのに  
村野四郎先生のお墓はどこですか  
Ⅲ  
汽車が内浦湾にさしかかったとき  
ねぶた  
秋あじ弁当 
コタンの話 
緑のランプ  
ロシア民謡「黒いからす」  
クリコフさん 

詩集『雪の夕暮れに』(一九九六年刊行)より
五月の小さい庭 
クロッカス  
たんぽぽ  
山すその春  
さくら  
晩い春  
かっこう教えてよ 
晩 春  
なめとこ山  
宮沢賢治の投影による習作  
 1、アスパラガスの畑に 
 2、朝日橋が木の橋だったころ 
風 が 
空  
おそらく山は雪でしょう  
野の笛ひとつ  
雪の夕暮れに  
八人の女剣舞  
鳩くんよ 
草原で  
ヒマラヤを越える鶴 
「鶴」と呼ばれるこの国の歌を 
老 僧  
カシュガルの朝顔  
あとがき  

詩集『ゆきあいの空』(二〇一〇年刊行)より
一  
夜のうた  
夜はだれもが  
てのひらをしずかにひらくと 
樹が倒れる  
その日  
ひとつの海  
二 
早 春  
初 雪  
雪の音  
韓国海苔 
独居老人  
立丸峠  
七時雨山  
霧のなか 
嘘  135
三  
夕 鶴  
さくら草が還る  
ゆきあいの空  
雲の上では 
鶉たち  
蓮の花のローソク  
メメント モリ  
咲き残った菊 
庭の木々たち 
アネモネのうた  
さんさんと心残りせよ  
あとがき  

未収録詩篇
活 字 
チンチン電車の話  
春の日  
回帰する旗のように  
イギリス海岸 
白鳥がクークー鳴きながら 
プーシキンの庭 
春になったら  
雌牛のモナリザ  
一本の松の木  

解説・詩人論
大村孝子の詩業について     森 三紗   
北の人びとの魂を賢治と共に語る人
               鈴木比佐雄 
『大村孝子詩選集 一二四篇』を読んで
               吉野重雄  

略 歴  


詩篇を紹介


「宮沢賢治の投影による習作」

 2、朝日橋が木の橋だったころ
 ―老いた船頭の語れる―

朝日橋が木の橋だったころ
北上川はよくしゃべっていたもんさ
岸辺のわすれなぐさや鳥たちと
たっぷりの川波もひだひだから笑いころげ
橋げたもまるで楽器の輪のように
ぐるぐる回って上機嫌さ
賢治さんだって橋のまん中までくると
船頭さん、何かおもしろい話はないかね……
すると川波も喜んで勝手な揺れ方をする
私は急いで時間をとめる
あれはとても秘密の話なのだ

八月半ばの晴れた夜のことだった
いつのまにかマグノリアのような雲が
空いっぱいに浮かび
りんごの匂いがあふれてくるのだ
血が霊気のようにざわめいてきた
するとぼんやり斜めに光っていた銀河が
まるで巨大な都市のように輝きながら
みるみる北上川に立ってしまったのさ
たぎりおちる天球の光と
青白く流れる川面の銀河とが
直角に結ばれたその時だ
激しく暗いその折目の中へ
ころげ落ちる影のように
小舟が一そう乗り移っていった

おお 夢のような話ではないか
あの舟こそが銀河鉄道のはじまり……
すると
賢治さんはにわかに橋の上で跳びあがり
風のように向きを変えながら
まるで故郷を奏でる調子で
透明な地図の上を吹きすぎていったのだ

賢治さんが誰なのか私は知らない
まもなく木の橋は鉄に変わり
岸辺の茂みは消えて川波も笑わなくなった
橋の上には燈火があふれ
夜空はただけむって見えるばかりなのに
銀河鉄道の幻だけは
夜の気配に昼の光を重ねながら
りんごの匂いをまき散らして人びとを酔わせ
誰もが長い旅から帰ったような目つきで
夢うつつに賢治さんの名を呼びかわす

私は老いた
もうやめにする
願わくはあの夜のように
天と地が一つの銀河で結ばれたとき
透明な足あとを虚空にみたして
とおい友だちすべてがここに帰ってほしい
そしてあのころのように
たっぷり流れる川波のひだひだから
ぐるぐる回って笑いころげてほしい
北上川がまるで大きな楽器の輪のように―
 

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