コールサックシリーズ

くにさだきみ詩集
『国家の成分』
マンハッタンの/ツィンビルなら瞬時に崩れた/今アメリカは―/〈核心階層〉〈動揺階層〉〈敵対階層〉/ごちゃまぜにしてつくった「サラダ・ボール」//現在の/わたしは/この国の「非国民」ではないのだろうか。
(詩「国家の成分」より)
栞解説文:鈴木比佐雄
A5判/152頁/上製本
定価:2,160円(税込)

解説文はこちら

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発売:2008年12月8日



【目次】


第Ⅰ章 国家の成分


炭を焼く 10
「ムゴンカン」の絵の具箱 16
ヒマワリ 22
自殺の形態 24
爪を切りながら 26
岡山県動物の愛護及び管理に関する条例 34
ネーミング 40
Go Home Quickly 46
ヨギさんの穴 60
アウシュビッツの残された数字 68
国家の成分 78



第Ⅱ章 梶草樋之尻「嫁いらず観音」


風の道 96
猪の風呂 98
花の活用形 100
空っぽの手 102
瀬戸大橋 106
雪隠から見えるもの 110
梶草樋之尻「嫁いらず観音」 114

第Ⅲ章 〈遠くを視る〉もの

戦場のあいさつ 120
戦争の「口実」 122
歴史のフシギ 124
「九のだん」のひみつ 128
〈ほとばかいとる〉共通語 134
〈遠くを視る〉もの 138
『無言館』の木と花と 144

 


あとがき 148
略歴 152



【詩を紹介】


国家の成分

北朝鮮では
人民が
「成分」に分けられている。
〈核心階層〉
〈動揺階層〉
〈敵対階層〉
成分は
大きく分けてこの三つだという。

朝鮮労働党の党員とか
一九四五年八月以前に労働者・貧農だったもの、
朝鮮戦争で
死亡した兵士の遺族は、
〈核心階層〉

その逆の
〈敵対階層〉は、
地主。
資本家。
キリスト教徒や仏教徒。

〈動揺階層〉というのは
いまは労働者階層なのだけれども、
以前は
中小企業の経営者だったり
土地持ちの農民だったりしたという。

そういえば、
わたしの提出した履歴書にも
小さく
『本人階層』という欄があって、
そこに
「事務労働者」と書くように言われた。

せめて
四年制大学を卒業していたら
「知識人」と書けるのだけれど、
教育学部の
二年課程修了だと、
『本人階層』欄は「事務労働者」だ。
(誇りをもって
  「事務労働者」と書けと言われた。)

あのとき
日本共産党員のわたしは
国家にとって―
まぎれもなく
〈敵対階層〉であったはずだが、
党内での「成分」は
たぶん
〈動揺階層〉のひとりであったろう。

どこの国でも
いつの時代でも
民衆は
「成分」に分けられるのだ。

江戸時代の
士・農・工・商・穢多・非人。
どこまでが
〈核心階層〉で
どういう身分は
〈敵対階層〉と見られたのだろう。

日華事変から第二次世界大戦までの
戦時中。
社会主義者は
(自由主義者も)
「非国民」だと言われてきたが、
〈敵対階層〉は
どこまで拡げられ
どんな人たちが
「非国民」扱いされてきたのか。

現在の
わたしは
この国の「非国民」ではないのだろうか。
資本主義国家にとって―
〈敵対階層〉と見られないですむ
共産党員がいるのであろうか。

      ※

べつに
社会主義国でなくてもよかったのだ。
アメリカ人だって
人は
「成分」に分けられている。

アメリカ市民は、
日曜日がくると教会に行き
ミサをうけ
讃美歌をうたい
バイブルをひもとく。

アメリカは「クリスチャン」の国。
『神の国』

 プロテスタント 50%
  カトリック   23%
  ギリシャ正教  1%
  モルモン教   1%
  ユダヤ教    2%
  その他     3%
  なし      10%
  答えず     1%

つまり
二〇〇四年五月に
ギャラップ社の実施した世論調査では、
アメリカ人の
半数が
プロテスタントだという結果であった。

「人種のるつぼ」と呼ばれる国だから、
宗教だけで
「成分」分析をして、
〈核心階層〉だとか
〈動揺階層〉だとかに分けるのは
とても
むずかしい。

でも
わたしは思うのだ。
一六二〇年 十二月
「メイフラワー号」で大西洋を渡り
マサチューセッツ州
プリマス港に着いたピューリタンこそ
最初の移民。―聖家族―
しばらくは
このひとびとがこの国の
〈核心階層〉だったに違いない。

いまも、
マンハッタンの
「自由の女神像」の台座には、
ユダヤ系女流詩人
エマ・ラザルスの詩の一節が彫られている。

 私に与えなさい。
  自由に生きたいと請い願う
  貴国の
  疲れた人々、貧しい人々の群れを、
  人間が溢れんばかりの貴国では
  クズともみなされる、惨めな人々を。
  家もなく、
  嵐に弄ばれる、これらの人々を、
  私のもとに送りなさい。
  黄金の扉のかたわらに、
  私は灯をかかげましょう。

最初は
アイルランドからの植民者だったが、
革命に失敗し祖国をのがれたドイツ人や
迫害されたユダヤ人―
イタリア人もロシア人も華僑も
日本人も―
クズとみなされた新移民たちが―
トーチを掲げる「自由の女神」に与えられた。

貧しい
英語の話せない新移民たちは、
アメリカ社会の最下層をつくる。
白人で(英語が母語の)
アングロサクソン系の
プロテスタントは、
その指導層を占めていた。

やがて
(スペイン語を母語とする)
ヒスパニックが増加してきて
極めつきが
奴隷として輸入されてきた黒人だった。

華僑だとか日系人だとか
仏教徒もいたはずだったが、
仏教徒なら「その他 3%」の「成分」だろうか。
「なし 10%」には
わたしみたいな
唯物史観の人間が含まれるかどうかだ。

何よりも
「答えず」の「1%」。
その「成分」が
イスラム教徒ではないとだれが言えよう。
かりにタリバンだったって―
別に不思議のないことだった。

帝国主義国アメリカの「成分」を知りたい。

マンハッタンの
ツィンビルなら瞬時に崩れた。
いまアメリカは―
〈核心階層〉〈動揺階層〉〈敵対階層〉
ごちゃまぜにしてつくった「サラダ・ボール」

(まさかこの国も
  ハワイみたいな日系移民の
  「サラダ・ボール」にはならないと思うが、)
れっきとしてわたしは日系である。

仏教徒ではなく、神社神道の家系の―
わたし。
日本共産党・党員のわたし。
核も
核兵器も否定して、その
〈核〉
廃絶を願うわたし。

北朝鮮だけの話ではなくて
アメリカ合衆国の「成分」表でも
わたしは明らかに〈敵対階層〉。

なにを聞かれても「答えず」の「1%」。

資料『そうだったのか!現代史パート2』池上彰著(集英社)
   『そうだったのか!アメリカ』池上彰著(集英社)



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