コールサックシリーズ

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大原勝人詩集
『通りゃんすな』

せめてあの橋を渡れば・・と
行手を遮るものがある
それは、通りゃんすな、と
煩悩の此岸に私を押し返した
かずらのように痩せ細った亡き父母の手だ
「通りゃんすな」より

栞解説文:鈴木比佐雄
A5判、104頁、ソフトカバー
定価:2,100円(税込)

解説文:鈴木比佐雄はこちら

大原勝人詩集『通りゃんすな』

発売:2007年4月15日



【目次】

1章 花の叫び
花の叫び 10/終日吹雪 13/伊春(イチュン)の春 16/追跡者 19
特別寝台車 22/鳥葬 26/ポタラ宮殿 29/砂の館 32

2章 十輪院の火渡り

十輪院の火渡り 38/俺のふる里 41/太陽に向って走れ 44/ 瀬戸の潮騒 47
ホームレス 51/夕陽の森 53/鯛の行方 56/の葉物語 59/嘘 62

3章 通りゃんすな

通りゃんすな 66/回帰 69/赤とんぼ 72/乱れ雲 74/おふくろ 78/路 81
秋桜 84/小舟 86/早春譜 88/花の季節 92/秋 94/回天 砕け散る 97

あとがき 100

【詩を紹介】

ままにならない手術台の上から
一本の橋が暗闇に向かってがっている
渡ろうか渡るまいかと
迷い佇んだその橋も取り壊されて
エーテルの匂いが漂う径を
後戻りしたあの日
チラチラと見え隠れする
彼岸の灯りを背に
りついた村の広場
くりひろげられた盆踊りの夜に
浴衣姿の輪に踊った愛ちゃんや
鉦や太鼓で秋空を焦がした宵宮に
祭り半纏の渦の中で
御輿をかついで汗に溺れた哲ちゃんも
みんな村はずれの橋の向こうへ
姿を消してしまった

凌霄花(のうぜんかずら)の花だけが鮮やかな
朽ちた橋を渡ろうとして
またしても纒わりつくかずらの通せんぼ
生きるという聖域に名を借りて
み違った歯車は狂ったまま
くり返し重ねてきた恥と慾の数々
悔恨の海は深く淀み
怨嗟の声だけが遠く海鳴りのように
魂をしめつける

せめてあの橋を渡れば……
と行手を遮るものがある
それは、通りゃんすな、と
煩悩の此岸に私を押し返した
かずらのように痩せ細った
亡き父母の手だ

*エーテル‥溶媒液。麻酔に使用する。


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