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宇都宮英子詩集
『母の手』

五月の野辺には/青い香りを放つ青葉若葉が/みちみちていて/再び春祭りの旗が/風にはためいているけれど/元気な母は/美しい母は/もうその中にいない(「悲しみの情景」より)

栞解説文:鈴木比佐雄
A5サイズ 128頁 上製本
定価:2,100円(税込)

解説文:鈴木比佐雄はこちら

宇都宮英子詩集『母の手』

発売:2009年5月11日



【目次】

第一章 母の手

私の手 10
土 筆 12
まな板の音 14
悲しみの情景 17
母のにおい 20
誕生日 23
収穫の秋に 25
さくらんぼう 28
桃の実るころに 31
兄 妹 34
父 37
命の不思議 40
春祭り 43
白 桃 45
行く夏の朝 48
あれ以来 51
二人で朝茶を 54
新しい生命の誕生の日 57
花を摘んで 60
風呂敷 63
こ ぶ 66
希 望 68
声 71

第二章 初なりの柿

初なりの柿 76
笑い上戸 78
階 段 81
取って置きの良い話 84
各駅停車の電車に揺られて 86
年賀状 89
春の雪 92
橋の上で 94
七曲り 97
立 春 100
カナダからの便り 103
仕 舞―謡曲「紅葉狩」― 106
化 粧 109
梅の実 111
日 課 113
水の惑星 115
赤いほおづき 118
雨の日に 120
晩 夏 122

あとがき 126

 

【詩を紹介】

私の手

少し前まで自分の手があまりごっつくて大きいので
人前でなるべく隠していました
あまりにも母の手に似ているので
それも嫌で嫌でたまりませんでした

ふと気づきました 自分とは手のことだと
手が語るわが人生
この手があったから 詩も書けるのですね

ざらざらで かさかさで節くれだった 太い指
最期に組まれた 母の手は
「やっと休めるよ」と言っているようでした

やっぱりお母さん 生んでくれてありがとう
あなたの苦労を思えばどんな事でも 乗り越えて行けます

自分をいとおしむことが
家族や周りの人への思いやりにつながることを知りました

やっと この私の手が 大好きになりました


悲しみの情景

村はずれの古い神社に
祭りの旗が立ち並び
花吹雪を散りつくした
桜の老樹の枝々から
あふれ出る若緑青緑

その木もれ陽が
キラキラ光る参道は
訪れる参詣人で賑わい
その中に 野良着ではない
美しい着物姿の母がいた
節くれた手を合わせ
一心に社殿で祈るその姿を
そっと見上げているだけでも
胸がつまった子供のころの
あの時

その母はもういない
五月の野辺には
青い香りを放つ青葉若葉が
みちみちていて
再び春祭りの旗が
風にはためいているけれど
元気な母は
美しい母は もうその中にはいない



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