コールサックシリーズ

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杉本知政詩集
『迷い蝶』

この星に季節を巡らす歯車が/ 少しずつ狂い始めていますよと/ 風が肩越しに声を掛け通り過ぎて行く/ 少し憤りの混じった悲しみを背に乗せ/ 還れない季節を目指し蝶は飛んで行った/ 詫びに似た気持ちが少し後を追っかけていた(「迷い蝶」より抜粋)

栞解説文:鈴木比佐雄
A5判/144頁/ソフトカバー
定価:2,100円(税込)

解説文:鈴木比佐雄はこちら

杉本知政詩集『迷い蝶』

発売:2010年7月6日



【目次】

Ⅰ 迷い蝶

声の無い会話  10
空を裂く言葉のように  14
語りかけて  18
風の囁き  20
見続けて何時も  24
空の里  28
すこしずれた所から  32
落葉の向こうへ  36
瞥 見  40
亜希の実  44
故里の柿の実  48
響きのない跫音  52
白い鳥  56
迷い蝶  60

Ⅱ 海の瞳

海の瞳 故福中都生子氏へ捧ぐ H20・2・9  66
墓掘りニックに  70
島は忘れなかった  72
義兄の夏  76
土橋の記憶
  (1)橋の周り  80
  (2)兵士の朝  83
  (3)峠の航海者たち  87
火の雨降る夜の記憶  92
Ⅲ 明日の旅

声が聴えて  98
二つの月に  102
う そ  106
朝の台所から  108
時には空を飛んで  112
父の仕種で  116
旅 へ  120
コーヒーのある風景  124
昼の夢
  その一 ―昼の夢―  126
  その二 ―日の丸弁当―  128
  その三 ―悲しい因果―  130
西域夢幻  134
明日の旅  138

あとがき  140
略 歴  142



詩篇を紹介

迷い蝶

何もすることが無いからではない
断続的な雨手の痛みに耐えるのが辛く
まぎらわすため畑を耕すことにした

今年は殆ど一年の間
首一つ世の中から引っ込め
ひたすら静けさに身体を沈めやり過してきた
時には痛みの合間を縫い
思いの翼を広げたり畳んだりして
未だ知らぬ国を地図の上で旅したり
長く病んでいる友へ届かぬ言葉を呟いたりもした

畑の害虫予防には
寒の間 晒すのが有効だと
うろ覚えの知識をなぞって
スコップでガバッと土塊を起した
おっ 金ぶんと兜虫の蛹が出て来た
そおうと元の土の中へ戻してやる
長い長い時をつなぎ合せ
継ぎ継がれたいのちなのだから
隣の小松菜や白菜の葉陰には
冬を迎えながら
生涯を終えられない青虫や蝶の姿が見える
この星に季節を巡らす歯車が
少しずつ狂い始めていますよと
風が肩越しに声を掛け通り過ぎて行く
少し憤りの混じった悲しみを背に乗せ
還れない季節を目指し蝶は飛んで行った
詫びに似た気持ちが少し後を追っかけていた


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