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山下静男詩集
『クジラの独り言』

アメリカ海軍の潜水艦の記録には
ヒゲクジラが
十二年ただ一人で遊泳していると言う
これまで聞いた事のない
声を発しながら
(「クジラの独り言」より抜粋)

栞解説文:鈴木比佐雄
A5判/136頁/上製本
定価:2,100円(税込)

解説文:鈴木比佐雄はこちら

山下静男詩集『クジラの独り言』

発売:2010年7月29日



【目次】

Ⅰ 野仏様

むかしあった練兵場で   10
吹き消した者は      14
また背中がひりひりする  18
く つ          22
京山物語         26
Sを見付けた       30
戸板の人は        34
山のスケッチ       38
出べそ          42
根っこ          46
蒲公英          50
重ねた足がはずれる間の  54
カナリヤのための窓  58
野仏様        60

Ⅱ クジラの独り言

クジラの独り言    64
蚋          68
いぬのふぐり     72
熊ん蜂        76
留守 留守      80
鍵 は        84
蚯蚓が光る      88
たばこの吸い殻が   92
エイッ        96
待つということ     100
頑張ろう        104
ニュージーランドで(1)  110
ニュージーランドで(2)  116
似 顔         120
霞んだ空から      124

あとがき  130
略 歴   132



詩篇を紹介

クジラの独り言

小鳥の声に目をさました
なにかを訴えている
窓を開けて耳をそばだてると
カザルスのメロディーを残して
舞い上がった

言葉でさえ
なかなか心の谺を伝えてくれない

中国の若者の排日デモ
いまの日本人にはよく伝わらない
郵政民営化の大事な法案
与党の議員でさえ分からない
前夜仕込んだ知識を
机をたたいて教えたが子供達は生あくび
三十年連れそった妻でも
遺品の日記に
主人には私の言葉が通じませんと

七十年来使って来た文言は
朦朧として形を成さず
指を開いて空をつかむ
あげつらうように
自分の詩の連なりが
巻き上がりながら消えていく

アメリカ海軍の潜水艦の記録には
ヒゲクジラが
十二年ただ一人で遊泳していると言う
これまで聞いた事のない
声を発しながら

*パブロ・カザルス「鳥の歌」


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