コールサックシリーズ

全詩集

『増岡敏和全詩集』 

ヒロシマで妹を殺された無念の青年・増岡敏和は民衆のサークル運動から詩人になった。彼を評価し熱心に励ましたのが峠三吉だった。やがて青年は全国の平和と民主主義・社会進歩の運動を励ますベテランになっていった。彼の詩は鋭いが、身近に息づく人間の鼓動があり、社会的弱者を見つめる目は温かい。信頼のまなざしに支えられて、伸びやかに共にうたう希望の詩世界は、もうひとつの戦後詩と言えるだろう。
(佐相憲一・解説文より)

解説:宮本勝夫、佐相憲一、鈴木比佐雄
A5判/592頁/ソフトカバー ISBN978-4-86435-074-7 C1092 ¥4000E
定価:4,320円(税込)

解説文はこちら

『増岡敏和全詩集』 

発売:2012年7月26日



【目次】

第一詩集 風の子物語 (一九五二年)

序にかえて 小学五年 竹井 澄子  
風の子(本全詩集では第三詩集に収録)
夜あけまで(本全詩集では第三詩集に収録)
映画館にて(本全詩集では第三詩集に収録)
その炎はどこで燃えるか(本全詩集では第三詩集に収録)
ヒロシマの歌  
眼に画いた絵  
静かな音律  
ある少女へおくる歌(本全詩集では第三詩集に収録)
彼の母のうた  
S税務署にて  
止まっている時間(本全詩集では第三詩集に収録)
その土地をかえせ!(本全詩集では第三詩集に収録)
芋の差し入れ 監房詩集1  
母はうたう  
本屋のうた 1  
本屋のうた 2  
跋 深川 宗俊  
跋 峠 三吉 
あとがき  

第二詩集 平和に生きる (一九五三年)

第一部 監房詩抄  
元気で出てきました! 
スターリン星  
運動の歌  
面会の歌  
ある写真  
朝のうた 
ある親友  
新聞の記事から 
第二部 平和のために  
春(本全詩集では第三詩集に収録)
父還らず  
妹よ、歌いつごう(本全詩集では第三詩集に「原 爆で殺された玲子」として収録)
十二月十二日  
あとがき  

第三詩集 明日への眼 (一九五六年)

序 赤木 健介  
Ⅰ  
冬来りなば 
県北にて Ⅰ 
県北にて Ⅱ 
映画館にて
静かな音律  
止っている時間  
その炎はどこで燃えるか  
風  
馘首前  
平和投票 
夜あけまで  
風の子  
尻と靴の先  
木の葉  
Ⅱ  
春  
ある少女へおくる歌  
その土地をかえせ  
平和のうたごえ 
家 庭  
歌と太平洋  
町 
芋  
無 題 
写 真 
メーデー行進 
ある秋の夜  
原爆で殺された玲子  
星の下  
町 で  
声  
巨大な沈黙の下に  
総選挙  
広島のうたごえ 
後 記 

第四詩集 戦いと挨拶 (一九六一年)

1  
警棒がふりおろされる  
暴行者に  
列  
歌  
腕  
木  
会 話  
肩  
野 火  
2  
「裏切者のうた」の歌  
ぼくらの時  
重い流れの中からも  
駅 員  
ぼくの八月八日の朝 
吼える  
不幸だった「いい時代」  
跋 赤木 健介  
あとがき  

第五詩集 未来の市民 (一九六三年)

自 序  
1  
打撃を受けぬ歌(本全詩集では第六詩集に収録)
戦 馬(本全詩集では第六詩集に収録)
やがて大樹に(本全詩集では第六詩集に収録)
臨時工  
きみからかたまれ  
夜と夢の中の夜と  
旗  
春を迎えに(本全詩集では第六詩集に収録)
2  
光る冬  
朝 
歌  
絵 
産れてくれ  
麦の穂  
愛と喘ぎ  
空想の子供  
動く!  
流民の裔  
子どもが語られるとき 
女の子なら  
父となる日の近いわたしは  
怖 れ  
蒲団とキャベツ  
黄金の夜  
その瞬間  
こどもをまもれ  
行動の歌・分析の詩 坂井 徳三  

第六詩集 我らの中のわが歌 (一九七九年)

「鳴る―広島・ベトナム詩篇、他」  
鳴る(本全詩集では第十詩集に収録)
寄せがき  
欅にうずまく  
工場ごと家庭ごとそっくりもってあつまれ  
確 認  
原爆碑銘について  
広島の女(本全詩集では第十詩集に収録)
春に翔ぶもの  
ランソンは諒山と書く 
「美しい欅―民族解放詩篇、他」  
美しい欅  
葛飾へのわかれ 
早い雲の下 
学習するラオス婦人に 
キューバの銃  
心の塔  
娘の銃  
手には本  
脱柵兵  
世界の一つの言葉のまえに  
雷 鳴  
陽がふる  
陽のなかに 
「春を迎えに―松川・白鳥事件支援詩篇」  
春を迎えに  
冬の座 
棺の釘  
戦 馬  
「松川」の暗黒に終わりを  
真実のはためく陽の中へ  
開 始  
「さあ始めなければ―実用詩篇」  
さあ始めなければ(本全詩集では第八詩集に収録)
愛はいつでも  
機関紙編集担当者に(本全詩集では第八詩集に収録)
選挙事務長のアピール集 
やがて大樹に  
打撃を受けぬ歌  
「陽の道―抒情詩篇」  
陽の道 
鍾 馗 
追悼 Ⅰ 
追悼 Ⅱ  
たんぽぽの歌  
「光る海を抱いて走れ―長篇詩」  
光る海を抱いて走れ 
増岡敏和論―花田克己 鮮烈なイメージ 
それからの増岡敏和論―山本隆子 戦力としての抒情 
あとがき  

第七詩集 広島の女 (一九八五年)

序詩 歌  
広島の女(本全詩集では第十詩集に収録)
赤い夕暮れの少女  
ある会場で 
光れスバルよ  
栗の花  
島の記憶  
桜 貝  
空を翔びたい  
幽かな父  
ヘッドライト  
消えた少女  
終詩 歌  
詩人の起床ラッパ 山岡 和範 
人・作品・そしてぼく 広島 洋  
あとがき 

第八詩集 飛ぶ種子 (一九八九年)

「静寂の螢」  
蛍  
花びら  
妹  
祈 り  
長い一日  
「燃える芝」  
燃える芝 
童 女  
鶴  
広島にて  
「むかしの恋唄」  
炎をみつめて  
丘の上で  
距 離  
夜汽車  
絵  
「華やぐ息子」  
突然の電話  
仙台の娘  
その後の会話から  
祝い歌  
「夏の回想」  
出 没  
道  
鬼の棲む家  
川風の入る部屋  
「故郷喪失」  
対 面  
死に近き母  
尊い朝  
菜の花  
遠い夕景  
ずれた緯度  
ふるさと  
「荒ぶる日に」  
早春の日射しのなかを  
危うい日々  
曇 天  
断崖のあけび  
雲の上で  
軋む戸  
「飛ぶ種子」  
さあ始めなければ  
飛ぶ種子  
冬の太鼓  
冬の虹  
薔薇の木  
機関紙編集担当者に  
今日一日が明日なのだから 
あとがき 
著書一覧  
共著編著等一覧  

第九詩集 アバンティポポロ (一九九一年)

「金色の翳」  
一九九〇年八月六日に  
天に焼く  
鶴見橋 
海傾いて  
夕映え  
アバンティポポロ  
*男雛の祭りに  
萬 歳  
手を振る  
ままごと  
*心願  
むかし諺があった  
二つの沈黙  
冬の日に  
写し書き  
*讃歌  
讃 歌  
地に立つ欅  
声を挙ぐ  
地の声  
*天の鯨  
わかれをありがとう  
鰯 雲  
風はひらひら  
黄金漬け  
ドラマは続いている  
あとがき  

第十詩集 虹の碑(原爆被爆者証言詩抄)(一九九三年)

序 死者のために生きる 田川 時彦  
「虹―真実井房子さん物語」  
川原で  
虹  
全 滅  
コトモタスケテ  
念仏おじいさん  
鬼  
「碑」  
夜叉僧  
直立浮遊死体 
焼 く 
相生橋 
カンパレカポチャ 
風の熄むまで  
ドラマひとつ  
鳴 る  
広島の女  
「蝉しぐれ」  
挨拶のように  
回想の蝉しぐれ  
負い目  
釣 瓶  
滅びの碑  
「大夕焼」  
大夕焼  
夢の話  
日の丸の旗を振る話には  
悪い癖 
心願の座  
あとがき  
参考文献  

第十一詩集 花なき薔薇の傍で
   (原爆被爆者証言詩抄) (一九九七年)

「母鶴」  
母 鶴  
八月六日に灼かれて 
逆さにはいかぬ歳月の  
母の平和祭  
逃げる影  
大一族  
げんげの花 
嘆きの舌  
五十回忌 
「八月六日に灼かれて」  
この子を起こせ 
起き上がれない死  
母子地蔵 
二人寝釈迦  
先生ありがとう  
火の下の念仏偈  
朝鮮人のおばさんと妹を負ぶった男の子  
微笑を翳す幼女 
死にゆく少年  
花なき薔薇の傍で  
坊やと修羅の人  
四次元の軌道を走る電車  
峠三吉の最期  
「花の匂いは」  
花の匂いは(本全詩集では第十二詩集に収録)
天に水を撒く(本全詩集では第十二詩集に収録)
パラドックスの鴉  
いかんのである  
クロード・R・イーザリーの懺悔 
軍備管理・科学審議官ミスターKの罪と罰 
隅田川  
いろはにほへとちりぬる  
五百羅漢寺で  
注  
あとがき  

第十二詩集 光の花 (一九九九年)

Ⅰ 祀り  
古里を壊すな  
光の花  
風 景  
祀 り  
パントマイム  
天の骨  
風に鳴る  
Ⅱ 染められる  
花の匂いは  
天に水を撒く  
屋上の孫  
幼い魂は  
染められる  
孫の天地 
泣く子  
ママを呼ぶ子  
写真に添えて  
わが古稀に  
別れを泣く子  
電話ストーカー  
草原のマンタ  
手を合わす子  
走 る  
ぶら下がっていた魂  
ある回想  
Ⅲ 遠い夕焼け  
降り込み  
雨の宴  
新居を訪ねて  
雨の朝  
遠い夕焼け  
五月の絵  
Ⅳ 錘  
錘  
一事件  
遠い歌   
うるまの島歌  
月桃の赤い実  
玉泉洞で  
あとがき  

第十三詩集 茜 (二〇〇二年)

*  
ある朝 
賛 歌  
茜する鏡  
小さな森の家で  
夕焼けの時間 
*  
滴 る 
無言館で 
座 像  
時間切れの絵 
絵の目 
水を運ぶ農婦 
*  
波  
薔薇の降る町で 
子ども祭りの日に 
桜が咲いたら 
音楽に誘われて  
土産  
風ぐるま  
*  
うるまの白い鳥  
安保の見える丘で 
青丹よし  
眠る男  
茶番のたんびに  
微 笑  
*  
百歳まで一緒に  
救急車にて  
心筋梗塞で倒れた日  
元日の朝  
*  
片雲の風  
馬は嘶き鈴が鳴り  
ふるさとに帰ると 
母の上京  
あとがき  

第十四詩集 永代までも言問わむ(カンタータ詩集)(二〇〇五年)

原爆で殺された玲子―広島  
  序 章 釣 瓶  
  第一章 海傾いて  
      玲子はどこに  
      燃える芝  
  第二章 母の歌  
      アバンティポポロ 
      涙 橋  
  終 章 億万の花を 
永代までも言問わむ―東京大空襲  
  序 章 橋の名  
  第一章 火の壁 
  第二章 遅れた警報  
  第三章 逃 走  
  第四章 脱 出  
  第五章 死んでも走る母親  
  第六章 亀戸の焼跡で  
  終 章 炎 群 
ウチナーンチュの母―沖縄戦  
  序 章 火  
  第一章 運命の行き先  
      崖 
      おばあと男の子  
      おじいともう一人のおばあ 
  第二章 壕の中で  
      飢え  
      止まった時間  
      指の目 
      集団自殺  
  第三章 その後  
      救出されたが  
      再びの母  
  終 章 沖縄はいまも  
光ねんうちゆみ―わが心の沖縄  
  序 章 空に浮く島  
  第一章 うるまの島唄  
  第二章 うるまの昔話  
  第三章 鐘を鳴らして 
  第四章 絵にする夢 
  第五章 青めく暦に  
  第六章 光ねんうちゆみ  
  終 章 わが心の沖縄よ  
跋 井上 正志  
あとがき  

詩集未収録詩

「蒼荘」より  
出 郷  
「うんなん」より  
夜  
「日本海流」より  
山を仰いで 
「廣島文学サークル」より  
血の洗礼 日鋼弾圧事件 
「反戦詩歌集」より  
愛と憎しみ  
詩誌「われらの詩」より  
外は嵐だ  
なかまの肩  
眼ん玉  
街へやる手紙 
歌  
よ る  
詩誌「われらのうた」より  
李徳全女史歓迎  
わが故郷  
詩人本屋  
鉄路のうたごえ  
青年栄光曲  
石の沈黙 
城 壁  
父と子 
早 春 
道  
演 説 
サラリーマン 
玲 子  
生きかえらぬものはない 
道  
町 へ 
遠い富士  
「道」抄  
おまえになろう  
冬の木  
詩誌「樹木と果実」より  
沖縄の少女  
「医療文芸」より  
灼 身  
知恵を使う方法のうた 
詩誌「日曜」より  
パンの要求 
偽装の海 
戦いが  
 まだ力に  
  ならないかにみえるとき  
音  
言葉  
体 験  
人体実験  
鷲を撃て!  
報 告  
母たち  
敵対の馬  
燃えなさい  
日溜り 
ぼくの南朝鮮はいま囚われているか 
無 題  
歌  
祝婚歌 
虹―「広島通信」終刊号に 
歌―峠三吉詩集『にんげんをかえせ』を編纂して 
雪の日 
若く死んだ友へ  
無言歌 
明日へ  
甕 
子の幻 
鐘の音 
平和行進 
ぼくの最高の挨拶 
友・近方に去る 
噴 水  
芽を仰ぐ
絵を描く子  
内弁慶 
ママ離れが出来た! 
愛でる  
色を挿す  
遠くから来る顔 
黒い胴体の中をつっ走りながら 
鯛焼きの唄を労働歌のように
洗濯日和に  
元安川 
天の鈴を鳴らして 
碑 銘  
赤い口から水流れ 
宇宙線を揺らして  
夕焼けを傾けて 
幼い問いに  
喪のある風景  
新 緑
初 空  
初生り 
みみずのこえ 
たおやかにおおらかにたからかに 
詩誌「詩人会議」より  
風に吹かれながら 
明治の翳  
骨の音  
墓 誌  
免罪符  
ぐだぐだと言う  
峠  
顔のない墓誌  
傘を斜めに差した母  
茜の少女  
魄戸を撫でられ  
長く危うい夢  
蕾  

仁王の男(原爆一号の故吉川清) 
いろは匂えど  
真夏のページを  
大夕焼   
花を翳して 1   
花を翳して 2  
天の音符  
亡母を呼びに  
詩誌「いのちの籠」より  
維 持  
死 票  
災 害  
歌誌「新日本歌人」より  
遠い言葉  
火の問い  
新聞などより  
追 撃  
ふるさとをつくれ 
大男の死 
追悼・戦いのペン 
歌 
めでたいという言葉は  
祝い歌  
明日へ  
雪の日 
激しい微笑 
歌 
言葉のなかに 
太 鼓
この火をつなぐ
そうはいかぬが例えばの話 
洗濯日和  
初日に  
しゃらくせえ   
道をつくれ  
掲載誌不明  
地 図 

評 論

峠三吉詩集『にんげんをかえせ』解説より  
『サークル運動入門』(一九六九年東邦出版社)より
サークルはどうして生まれたか 
サークル運動とはなにか 

増岡敏和への追悼文 

増岡さんの笑顔は忘れないよ 山岡 和範  
炎のように燃え起き上がったひと 山岡 和範  
増岡敏和さんを偲んで  山本 隆子  

解 説 

増岡敏和 情熱の炎をたぎらせて 宮本 勝夫   
二十一世紀に生きる増岡敏和の詩世界 佐相 憲一      
峠三吉の精神を引継ぎ発展させた人 鈴木 比佐雄 

増岡敏和 年譜 
編 註  


詩篇

馬は嘶き鈴が鳴り


馬に鞭打ち疾風のように
駆け戻る男に重ねて 私も
小声で歌に合わせた
音楽喫茶「ともしび」に行くたび
メインテナーの長谷川清に いつも
「郵便馬車の馭者だった頃」をリクエストした
まさか 私の妹に
不幸が見舞うなど思いもしなかったが
ふいに空が裂け 太陽が弾けて
閃光に灼かれた骸を抱え上げることも出来なかった
遠いむかしだが思い出すと 胸がつぶれる
長谷川は 突如 歌をとめ
会場を鋭く一瞥して
「皆の衆」と野太くおらぶのだ
―あの娘が死んだ
母の無言のあの尖った嘆きが いまも
この歌に繋がって 私の弔いを深くする
眼裏にひろがる空の果てまで
馬はいななき 鈴が鳴り……

 (詩集『茜』より)

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