書籍一覧 新刊
吉木幸子遺稿詩集
『わが大正の忘れな草/旅素描』
自由な心を隠した戦中の化粧ではなく、敗戦後にもう一度生き直そうと襟を糺し、戦後社会に出ていく直前の自分に相応しい化粧をする「はなやいだ心」が描かれている。同時に化粧に酔うような心持ちを拒絶する、「もうひとりのわたし」の冷静な心境が読み取れる。(解説文:鈴木比佐雄 詩人・評論家)
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| 解説文:鈴木比佐雄 | 
| A5判/288頁/並製本 ISBN978-4-86435-150-8 C1092 ¥2000E | 
| 定価:2,200円(税込) | 
 
        発売:2014年4月4日
【目次】
Ⅰ 『わが大正の忘れな草』
わが大正の忘れな草	
歩けば風もいる	
五位鷺	
霧の素描	
ハイウェイ・ブルース	
雪 女	
雲と乳房	
牧野は雲に近く ―久住高原―	
飽食の図	
風知草	
花と金貨	
バイソンの午後	
―シスコの公園にいたアメリカ・バイソン―    
吉野の庵 ―西行庵にて―	
雪 国	
あすか路	
満天旅日和 ―三詩人へのレクイエム― 
彩よせ	
田園物語	
冬の旅	
冬の花束	
紙 魚	
遠い月	
東京 '91 秋を歩く	
東京 '91 秋を歩く 2	
水と瓶	
吉備路	
旅 心	
雲は憶えていた	
かいつぶり実演する	
十三夜	
夏の名残	
冬 空	
間奏曲	
菜の花は岸辺に淡く	
闇という群像へ	
ヴェニスの商人	
ランチ・タイム	
セーヌ奔流する
タイム・カプセル	
望 郷	
七月の波紋	
老人と飛行機	
水軍記	
翔んだ	
春の名残	
初夏のエプロン	
系譜の郷 ― 祖父母に―	
ヴェニスの商人 2 ― 劇団四季に―  
銀の糸 ― 父系の祖母ハルに―	
トマト
海の手帳
海の手帳 2	
都井岬	
初夏を渡る
街と女と ― 鵬の中島茂に―   
異端の宿	
瑠璃三昧	
文化祭	
秋色三昧 ― 故・小田雅彦に―	
Ⅱ 『旅素描』
吹上浜	
天草灘	
大江天主堂	
肥後の赤牛
国東半島
都井岬	
美保関	
小豆島	
箱 根	
華厳の滝  	
シスコの蟹料理
金門橋  
ディズニーランド	
州 境	
ラスベガスのエトランゼ
ベーカースフィールドのおもちゃ    
信濃路	
能登の海	
立山連峰	
永平寺	
吉野川	
吉野山	
石舞台	
奈良万葉植物園	
開聞岳	
久住高原
奥津温泉 ―藤原審爾に―	
東京都	
宇 宙	
とろ峡	
潮岬灯台	
平家の里
雲海の人
ふるさと子守唄	
奥津温泉 2	
埼玉のひと         
みちのく万緑行
足摺岬 ―ジョン・万次郎像に―
かずら橋	
路傍の橋 ―朱塗り―    
羚羊ひと恋い	
巡業幟	
霧島残照	
吉野葛  
壱岐の島に雨降る	
天草灘残照	
九州高速道雨宿り	
青海島無情 ―懐旧遥かなり― 
坊ノ津は海路はるか	
明日香の局 ―からす瓜の旅― 
Ⅲ その後の詩篇
年賀状 二千一年	
旅一幕	
詩碑帰る	
パンより熱く	
腕	204
旅を拾う	
ポスト	
公 園
Ⅳ 補遺
或るアプローチ	
大原美術館	
初出一覧   
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わが大正の忘れな草
背伸びする小さな窓口
粉ぐすりの袋に
かあさんの名を確かめる
あぐりというのは他にない
人力車が黒く光って
病院の玄関わきにいた
ちらと見えた
車夫の大きな脚もと
いつかお医者を乗せてきて
黙って待っていた人
紅いはな緒はそっと歩いた
見たくなかった
夕暮れの片隅から
その人は寄ってきた
黒っぽく音もなく
怖くて足が止まった
耳のそばで声がして
ほい と握らされた赤い林檎
いきなり駆け出したのは
とてもひとりぼっちだったから
かあさん
















































