【経歴】
1966年三重県生まれ、兵庫県在住。
大阪市立大学法学部卒業。
大阪詩人会議「軸」編集長、関西詩人協会会員。
「コールサック」に参加。
詩集『青島黄昏慕情』。
【詩の紹介】
散 骨
ある演劇人(*)が死んだ
二〇一〇年に彼が死んだ意味
百年前の屈辱を魂の奥底に流し
在日として育った心
「私の遺骨を対馬海峡あたりへ流して下さい」
死を予感して遺書に記した
対馬から手を伸ばせば
プサンに届く
韓日の未来に向けての礎石として
己(おの)が骨を沈めてほしいと
「いつか公平」な韓日関係をと
人と人との交流をと
対馬の海流を荒だたせないようにと
今、青い海に 白い骨灰が
彼の魂となって
飛翔した
*演劇人・つかこうへい氏
(「コールサック」67号より)
ペットボトル
岩壁にペットボトルが流れ着くそうだ
しかもハングルのだそうだ
入江にゴミとなって積まれているそうだ
反韓感情高める対馬住民
写真で見る
朝鮮半島の岩肌と
対馬の海岸
元は陸つづきだったのだ
何故心も離ればなれになったのか
韓国展望所内の資料年表
一九一〇年がぬけている
心の棘なのだろうか
でも これを記載することから
事実と向き合うことから
本物の友情は育まれるだろう
ボランティアでペットボトルを回収に来る
韓国の若者たちもいるという
少しずつ 少しずつ
心の棘をぬいていこう
ペットボトルもゴミにせず
恋文入れた 宅配便
万葉人もびっくりの
潮の流れに愛情(エヂヨン)乗せ
いとし我が背に届かれよ
(「コールサック」67号より)
秋 雨
秋雨のしたたるホームに立てば
レールが呼ぶ
鬱病の私を
声がする
また声がする
電車に飛び込めと命令の声が
脳天からひびく
耳の後ろでささやく
〈仕事のできない奴は死ね〉
上司の声が頭の中で沸き立つ
グツ グツ グツ 幻聴の指令
〈そこで飛ぶんだ!〉
目の前を
特急列車が通過した
ホームの隅に一人
私は
しゃがんでいた
(「コールサック」66号より)
握 手
ソウルへ行った
教会の前を通ると
信者たちがコーヒーをふるまっていた
私も一杯いただく
〈チョヌン イルボン サラミエヨ
(私は日本人です)〉と言うと
〈イルボン イルボン〉と握手を求めてくるから
〈カムサハムニダ
(ありがとうございます)〉
〈カムサハムニダ〉
ソウルの本屋では
迷彩服が闊歩していた
今も南北「戦争」状態
日本の日常には
米兵と自衛隊
本屋にはコリア蔑視と侵略戦争美化
日本人の脳髄に注入される
こんな日本にこそ憲法九条はある
コリアンと握手
目の前の
柔和な目
(「コールサック」66号より)


