大森 ちさと (おおもり ちさと)
<経歴>
1956年 高知県生まれ、高知県四万十市在住。
1984年 第1詩集『川にな』(土佐出版社)
1991年 第2詩集『梨の花』(土佐出版社)
2001年 第3詩集『蛍ぶくろ』(土佐倶楽部社)
2010年 第4詩集『つながる』(新鋭こころシリーズ・コールサック社)
詩誌「ONL」「舟」同人。
現在、福祉関係に勤務。
<詩作品から>
こ こ
そこにいるのですか。
はい。ここにいるのです。
いつまでいるのですか。
わかりません。
ここってどこですか。
ここです。
雨
雨の日に
手を広げ空を握る
少年の暖かな手がある
この手は何処へ迷うのか
ボロボロと雨は降りつづけている
見たことがありますか
壊れていくこころを見たことがありますか
張り詰めていたものが一瞬に流れ
ボロボロに壊れていく
そういうこころを見たことがありますか
喜びや悲しみは一枚の紙切れのように
意味もなくたたずんでいる
そういうこころを見たことがありますか
でも そこには一万本の花が咲いているという
土の中で
土の中で
詩集と白い骨とが眠っている
父が二十七歳で逝った
息子のためにしたこと
二十年経った今
ひんやりとした土の中で
闇をかかえ眠っていた詩集に
骨は光を放ちはじめているという
つながる
何も驚くことはない
全てつながっているのだ
貴方も私も
町も村も
ネコジャラシも薔薇も
冬も夏も
手をとりあい
つながっている
十年前も今日も
百年前も今日も
手をとりあい
つながっている
父
初めて家を旅立った時
父は小さな駅のホームに立っていた
盆に正月にと父はいつもホームに立っていた
それから何回ホームに立っただろう
病院のベッドに横たわる
八十三歳の父がいて
「気をつけて帰れ」と言う
今日も
父はホームに立っている


