<経歴> 1972年、茨城県生まれ、結城市在住。詩人会議会友。「風歌」会員。センダンの木の集いメンバー。結城文学の会会員(連絡担当)。俳誌「風雪」元会員。2011年、詩集『緑の平和』刊行。
<詩作品>
寒いよう
一バレル九十九ドル
まで迫った年の冬
だったでしょうか
甥っ子と 縁側で
たっぷり 日向ぼっこを
百ドル分は したでしょうか
夕方になって
目やにがひどいので
お湯で顔を洗わせました
迎えが来て 甥っ子は
ママに怒られた
袖口がびっしょりじゃない
脱ぎなさい
外に出て
寒いよう
悪かったね
ママに温めて
もらいなさい
寒かった日のことを
いつか思い出すように
おじさんは その夜
まだまだ修行が足りないと
水シャワーを浴びましたよ
大学の実験室
1
工学部一年必修の
物理学実験Ⅰ
物理学実験項目の14
放射線の測定
僕がやりたかったのは
こんなことじゃない
工学部が肌に合わないのは
分かっていたが
数学を使うなら
どこでもいいや と
入ってしまった
2
実験は性に合わない
純粋な心が
どろどろになりそうで
小説ばかり読んでいた
三年のとき
作家になるんだ と
中退した
父は
まだ子供なのだ
と言った
3
農学部四年の
友人の実験室に
遊びに行った
友人は
ジャスト三分が
一番おいしいんだよ
と
カップラーメンの
蓋をあける
ような人に
なっていた
4
小さな冷蔵庫の
上部の冷凍室には
用済みのラットが
保管されている
捨てに行くから
付き合って
実験に使ったラットは
自然環境中に放出しちゃ
いけないんだよ
車の中で 友人は
説明してくれた
5
大学が所有する
敷地内の秘密の場所に
捨てに行く
ラットに
冥福を祈って
扉を閉じると
友人の目は
私のまだ純粋な目を
強く見つめていた
6
そのときは
友人の目が
いつかこれを
書いてくれ と
言っているような
気がしたが
違っていたかもしれぬ
ともかく
友人は
科学者の倫理と
戦っている
目をしていた
7
父は
まだ子供なのだ と言う
純粋なだけだ
いや 私は 強く言おう
異種なのだ
私は
実験室を逃げ出した
異種なのだ
冬休み
冬休みに
天才を 量産できる
わけもないのに
冬休みの生徒にとっては
今が追い込みだ
将来の夢や希望を祈る前に
除夜の鐘は打たれるのだ
宇宙に飛んでけ
我々は彼らを追放するために
研究をさせておく
彼らはロケットが どこまで
飛んでゆくか計算できても
自身の運命を
想像することができない
近代は光なのか闇なのか
人間は塵なのか君臨するのか
我々の生活は一瞬なのか意義があるのか
私はこの詩を三十五歳で書き
第二第三の読者に
会いにゆかねばならないのだ


