コールサックシリーズ

日高のぼる詩集
『光のなかへ』

おじぞうさんは/そこに立っている/うすれた記憶のなかで/ひたすら家族の迎えを待ちつづけ/ふたたびヒバクシャをつくらせないと/たちあがるひとたちの/ひとみから/あふれる 光のなかへ
(詩「光のなかへ」より)

栞解説:鈴木比佐雄
A5判/208頁/ソフトカバー            ISBN978-4-86435-070-9 C1092 ¥2000E
定価:2,160円(税込)

解説文はこちら

日高のぼる詩集『光のなかへ』

発売:2012年6月28日



【目次】

序詩 約 束 

一章 「光のなかへ」

光のなかへ
 証言―ヒロシマの少女の記憶から 
花をたむける 
でびら―田川時彦さんを偲んで 
ひこ地蔵幻想 
母への手紙 
誤 植 
あいさつ 
あんパン 
おにぎり 
わたしのポケット 
セミ―校歌断章 
サツマイモ 
夕焼け―被爆六十五年八月六日 
「誕生」 
アイゴー  
東京地裁103号法廷 ―二〇〇四年三月三十一日東数男原爆訴訟判決   
お墓にひなんします 
迷子札
コオロギ―八月六日 

二章「うりずんの風」

うりずんの風 
笑う魚 
スルルグァーの詩 
侵入生物 
アブチラガマ 
いのちの木―渡嘉敷島にて 
ハキダメギク ―五月十六日普天間基地包囲行動 
沖縄のきのこ―二〇一〇年五月十七日 
アマモ 
辺野古の浜にて 
いのちの輪 

三章「海霧のむこうに」

その朝 
夢を駆ける 
オーロラ 
ざっぱ
ふるさと ―北海道日高国様似郡様似町東様似
海霧のむこうに 
山をみる ―北海道様似町アポイ岳高山植物群落
      特別天然記念物指定五十周年に
米 
地ふぶき 
百人浜 
えりもミサイル基地ゆるすな 
風の記憶 ふるさと 
風の声
十津川 
髭 
馬糞風 

四章「ヒカリゴケ」

夢 
シシャモ 
ナマコ―海鼠 
ガンゼ 
エゾ狸 
鯨 刺 
べこのなみだ 
雲南のきのこ―二〇一〇年八月 
おから 
赤玉ポートワイン―酒飲み事始 
朝食―ブレックファースト 
荷物―ベトナムバイク事情 
ねずみ―略歴 
ちょうちょ 
ヒカリゴケ 

あとがき 
略歴 



詩篇

光のなかへ
 証言―ヒロシマの少女の記憶から


かたときも忘れることのできない光景を
少女は瞳孔の奥のスクリーンに焼きつけていた

瓦礫に埋もれた ヒロシマの街
道の両側のおびただしい屍
地鳴りのように
水を求めるにんげんの声
手をさしのべるにんげんの群れ
そのなかに
小さく立っていた物体
おじぞうさん と思った
異臭ただようなか
少女は姉とできるだけ見ぬように
坂の下の自宅へ急いでいた

丸みをおびた黒いその物体の横を
通り過ぎようとしたとき
思いがけぬ声を聞いた
はっきりと姉の名を呼んだのだ

その瞬間ふたり
一目散に走りだした
ふたたび通ったときは
もうなにも立っていなかった

だれ? と聞き返せずに
五十年が過ぎた

街の景色は変わり
ヒロシマを忘れさせようとする輩が
原爆の痕跡をぬぐいさろうとしても
おじぞうさんは
そこに立っている
うすれた記憶のなかで
ひたすら家族の迎えを待ちつづけ
ふたたびヒバクシャをつくらせないと
たちあがるひとたちの
ひとみから
あふれる 光のなかへ

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