書籍一覧 新刊
李美子詩集
『薬水を汲みに』
三十二篇の詩作品が一篇一篇ささやかに身がまえていて、最晩年の年齢域に突入した小生にとって、好ましい対応であった。素朴な展開で、水を少しずつ汲むような日常生活思想が伝わってくる。(〔帯文〕詩人 長谷川龍生)
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| A5判/144頁/ソフトカバー / ISBN978-4-86435-155-3 C1092 ¥2000E | 
| 定価:2,200円(税込) | 
        発売:2014年5月28日
Ⅰ
薬水を汲みに	
遠い視線
戦うかぼちゃ	
そうして夕べには
木根橋	
ウォーターマーク
迷路の町	
ちゃんそり、ぱんそり、よっそり  
窓のむこう
ムルオリ	
山深く	
下流へ
 Ⅱ
蓮の花	
ぶっそうげ	
油桃花	
雨の日の集会	
月の明かりに	
ゼロの風景	
翔べ、クロツラヘラサギ
身世打令	
遠いシニシュ	
 Ⅲ
貝のすむ町で	
乞田川のさくらトンネル
よこやまの道	
鳩に、人に	
峠の捲きみちで	
始皇帝のあんず	
水蜘蛛	
無印というしるしの店
猫と噴水	
自由人	
外国女	
【跋文】 水を汲む生活思想
 詩集『薬水を汲みに』に寄せて 長谷川龍生
あとがき
略 歴	
薬水を汲みに
婚礼の日の朝
スニは行李のなかに忍ばせた
夜明かしをして縫い上げたポジャギ
村の娘らの細く器用な指先を持たない
スニに針仕事は向いていないけれど
麻布をヨモギとホウセンカで染めて
淡い色あいのポジャギはどうにか仕上がった
未来の姑さまに恥ずかしくないように
若い嫁のスニ
夜明けを待って薬水を汲みに山にのぼった
村の女たちのだれよりも辛抱づよい
ときに ヌッテに遭うかもしれぬ
険しい金剛峰の下まで その水の冷たさ清らかさ 
甕いっぱいを頭にのせ山をおりる
鳥が目をさまし スニの頭上で水はたのしげにゆれて
はるか村の家々から朝餉の煙がたちのぼった
*1 ふろしき、袋物など。違う色布を合わせ縫う
*2 朝鮮オオカミ





