コールサックシリーズ

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速水晃
『島のいろ―ここは戦場だった』
沖縄戦は終わっていません、それどころか拡大しつつあります。そのことを、この地で強く感じています。(著者あとがきより)

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A5判/並製本/192頁 ISBN978-4-86435-177-5 C1092 ¥2000E
定価:2,200円(税込)

hayami_web

発売:2014年10月24日



【目次】
序詩 水筒   

 Ⅰ 白い道
白い道   
出るんです   

 Ⅱ 赤い月
赤い月   
慰霊の碑

 Ⅲ 青い空
青い空   
島は戦場だった
かさぶた  
當銘さんと行く

参考文献
あとがき


---------------------

序詩 水筒




薄く照らす月を逃れ
ぬかるみを這い轍に足をとられ
急ぎ この丘に辿りつくことができました
明けはじめる光のなか振りかえれば
草木は焼けただれ
見通しの良すぎる道でありました

そこには
きれいな水が届いている
そんな噂を耳に
南へ南へと歩きつづけてまいりました
踏みしめる地面がたわみ
弾力なくした枝々がくずれ重なっていくように感じられたのは
捨ておかれたひとびとの骸だったのでしょうか
湿りをおびた風がうすくなった胸をたたきます
海は群青の色をしております
眼球を射るのは
撃墜されたジュラルミンの城砦です

幾筋もの光を集め
そのものはそこにありました
むかしのままの形で
生きのびたことを恥じるように
鈍い色して立たされておりました
それがいま
頭のなかでぴちゃぴちゃと鳴りはじめます
影を消した暗がり
鉄の表面に触れると
清涼な冷たさが伝わってきます
渇きは増すばかりですが
錆びてしまった血が蓋をしているのです
ちゃぽーん
水滴が内側をしたたりおちていきます

戦場をさまようジブンの魂は
どこへ落ちていくのでしょうか
どこへ還るのでしょうか
土砂に埋もれてしまった洞窟
踏み固められた道
それとも命が芽ばえる畑のなかなのでしょうか
くぐもる聲を呑んで
海が吠えています


 ―沖縄終戦の地、摩文仁に建つ平和祈念資料館にて―

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「コールサック」(石炭袋)117号 2024年3月1日

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